大きな人の小さな始まり


とある小学校の遊具を全部作り直す依頼が来た。
だいぶ古くなってきて危ないので、この機会に全部一新するそうだ。
「実際に使うのは子供たちですし、子供たちの意見も聞きましょう。」
部下の提案で、グラウンドに遊びに出ていた子供たちに聞いて回った。
どんな遊具がほしいか、どこにどんな遊具があったら嬉しいか。
だが、所詮は子供。
それそれがそれぞれに一番好きな遊具を靴箱から一番近くにと言う。
「…これじゃいつまで経っても終わらんなー。」
部下のアイディアはよかったのだが、これでは収拾がつかない。
そんなとき、部下が言った。
「鈴木さん!この子が、すごくおもしろいこと言ってくれましたよ!!ほら、このおじさんにも俺に言ってくれたことを言ってくれないかな?」
「なんで何度も言わなきゃいけないだよー。」
その年頃特有の生意気な態度をしながらも、部下に何度も頼まれ、もったいぶりながら言った。
「ジャングルジムとすべり台が好きだけど、いっこずつってあきちゃったからいっしょにしちゃってほしいんだ。」
ほう。そんなものは考えたことがなかった。
「坊主!!でかした!!」
これまで見たことがないそんなものを、遊具の広場のど真ん中にドドンと置いてやろうじゃないか。
「おい。じゃあ、遊具の配置はこんな感じでどうだ。」
ひとつ大きなものが決まると、そこからは見た目と遊びやすさのバランスを考えて配置するのは簡単だった。
「おい坊主、おまえの名前は?」
――――あのときの坊主が、すっかり大きくなり、今では有名な設計士だと。
まったく、たいしたもんだ。
あのときは助かったなぁ。
なにぶん不慣れな仕事で…部下のアイディアもくみ取ってやれたしなぁ。
今じゃテレビに出るほどのお偉いさんになった坊主に礼は言えないが、感謝してんぞー、坊主。


end.